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こどもの近視を進みにくく― 低濃度アトロピン点眼治療と最新ガイドライン ―

[2025.10.18]

近年、子どもの近視が増加し、低年齢から進行するケースが目立っています。強い近視(強度近視)になると、将来的に網膜剥離や緑内障などのリスクが高まるため、「近視を進ませない」治療と生活習慣改善が注目されています。

1. なぜ近視が進むのか

近視は、目の奥行き(眼軸長)が伸びてピントが網膜の前にずれることで起こります。

スマホやタブレットの長時間使用、屋外活動不足、遺伝などが関係しています。

研究では、1日2時間程度の屋外活動や、勉強・読書中のこまめな休憩(20分に1回は遠くを見る)が近視の進行を抑える効果があるとされています。

2. 低濃度アトロピン点眼治療とは

アトロピンは瞳を開く薬ですが、0.01〜0.05%という非常に低い濃度にすると、まぶしさなどの副作用をほとんど起こさずに近視の進行を抑えることができます。

臨床研究では、進行速度を平均30〜60%抑制できたという報告が複数あります。

これまでは、マイオピンという薬剤をシンガポールから輸入して処方しておりましたが、2025年には参天製薬のリジュセア®ミニ点眼液0.025%が近視進行抑制用途で承認されました。

2025年には日本眼科学会から「低濃度アトロピン治療の手引き」が示されました。

個人的には近視学会にも参加しているため内容的には一般的な内容だと思いますが、公式の学会から見解が示されることは大きなことだとも思います。

こどもの近視は仕方ない、という考え方が少しずつ変わってきているのを感じます。

3. BHVI Myopia Calculatorとは?

― 治療効果を「見える化」する国際的ツール ―

BHVI(Brien Holden Vision Institute)は、オーストラリアの視覚科学研究機関で、世界的に近視研究をリードしている組織です。

同研究所が提供している「Myopia Calculator」は、近視進行をシミュレーションできる無料オンラインツールです。

◆ 利用のしかた

  1. 公式サイト(https://bhvi.org/myopia-calculator-resources/)にアクセス
  2. 医療者向けの利用規約に同意し、メールアドレスを登録(無料)
  3. 登録後にメールで送られる番号、コードを入力してログインすると、すぐに使用可能

登録は数分で完了し、医療者でなくても閲覧・試用ができます。(英語サイトですが操作は簡単です)

◆ どんなことがわかるの?

年齢・近視度数・人種(アジア系/欧米系など)を入力するだけで、「治療をしなかった場合」と「治療を行った場合」の近視進行予測グラフが表示されます。

例:8歳で−2.00Dの近視のお子さんの場合、治療なしでは17才で−6D前後、低濃度アトロピン治療ありでは−4.3D程度に抑えられる可能性があります。

◆ 注意点

・あくまで統計モデルに基づく予測であり、個人差があります。
・実際の進行や効果は生活習慣や遺伝、治療継続状況によって変わります。
・医師の指導のもとで経過観察しながら参考にするのが望ましいです。

4. 当院での治療とサポート体制

当院では、眼軸長測定による客観的な進行評価、低濃度アトロピン点眼の処方、副作用モニタリング、屋外活動・学習習慣の改善アドバイスを組み合わせ、総合的にサポートしています。

5. まとめ

・近視の進行は放置せず、早めの予防・治療が大切です。
・低濃度アトロピン点眼は安全性と効果の両面で確立された方法です。
・BHVI Myopia Calculatorを使うことで、将来の近視進行をわかりやすく確認できます。

お子さまの将来の見え方を守るために、気になる方はお気軽にご相談ください。

※本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。実際の治療内容は診察時に医師がご説明いたします。

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